スティショバイト中にミュオニウムの存在を確認

異なる方向から見たスティショバイトの結晶構造
図1:異なる方向から見たスティショバイトの結晶構造。本研究では、構造の基本単位をなす8面体の空隙(白色部分)に、注入されたミュオンがミュオニウムとして存在することを示した。

地球内部には含水鉱物などとして、多量の水が存在すると考えられています。本研究では水を構成する水素が、従来考えられていたように水酸基(OH)としてだけではなく、原子状の中性水素(H0)として、地球内部の鉱物中に存在する可能性を、ミュオン・スピン回転(µSR)法を用いて検討しました。測定に用いられたのは地球内部の重要な鉱物である、石英(SiO2)の高圧相「スティショバイト」です。

測定の結果、スティショバイトに注入されたミュオン(陽子の軽い同位体に相当)の多くが、ミュオニウム(中性水素に相当)として結晶格子の隙間に存在することが明らかになりました(図1)。この発見は、地球の深部マントルに、これまで想定外であった中性水素が存在する可能性を示唆するものです。今後、地球内部における水素の循環や、地球の進化・ダイナミクスの解明に向けて、高圧鉱物研究の新しい展開が期待されます。

GRCで合成されたナノ多結晶スティショバイト。

図2:地球深部ダイナミクス研究センターで合成されたナノ多結晶スティショバイト。

本研究は、東京大学の船守展正准教授・高エネルギー加速器研究機構の門野良典教授らを中心に進められました。ミュオン・スピン回転法による測定には多量の試料が必要であり、測定に用いられたナノ多結晶スティショバイト(図2)は、地球深部ダイナミクス研究センターの大型超高圧装置BOTCHAN-6000を用いて合成され、西山宣正准教授(現ドイツ放射光研究所研究員)・入舩徹男教授により提供されました。

本研究成果はネイチャー出版グループのオンラインジャーナルScientific Reportsの2月13日号に発表されました(Sci. Rep. 5, 8437, 2015:10.1038/srep08437)。

地球深部ダイナミクス研究センター

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