GRCを中心とした研究グループが,砂の主成分である二酸化珪素(シリカ)のみを原料とした新セラミックス,ナノ多結晶スティショバイト(NPS)の合成に成功しました.通常の材料には,硬いものは割れやすいという一般的な傾向がありますが,今回合成に成功したNPSは,硬さと割れにくさをあわせ持つセラミックスで,産業上広く利用されているシリカに,硬質材料としての使用という新しい可能性を与える研究成果です.
 硬質材料として従来使われている超硬合金は炭化タングステンに代表されますが,希少元素であるタングステンは原産地が世界で限定されており,将来的な価格高騰・資源枯渇が懸念されています.地表に最も多量に存在するシリカを原料とするNPSは,超硬合金に代わる新規硬質材料としての実用が期待されています.
 NPSはGRCの川井型マルチアンビル高温高圧発生装置を用いて合成されました.GRCでは,以前よりヒメダイヤを代表とするナノサイズの微結晶集合体(ナノ多結晶体)合成の技術開発・研究を進めており,この分野において世界をリードしています.NPS合成成功その研究技術が活かされたもので,今後も様々な鉱物・新規物質のナノ多結晶体の合成を目指しています.
 なお,この成果はGRCの西山宣正(前GRC准教授、現ドイツ電子シンクロトロン研究所DESY研究員)・入舩徹男教授・大藤弘明准教授,工学部の高橋学教授・松下正史講師らのグループによって行われ,材料分野の国際的な専門誌であるScripta Materialiaに2012年8月25日にオンライン版が公開されました(電子版:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1359646212005507?v=s5).また,平成24年8月29日(水)には新聞社・テレビ局の記者の皆さまを招いた説明会を開きました.


 本研究は,愛媛大学運営費交付金プロジェクト研究「大容量超高圧合成装置を用いた超硬物質・高温超電導物質の合成」(研究代表者:入舩徹男),および,科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業「さきがけ」研究領域「新物質科学と元素戦略」(研究統括:細野秀雄)における「SiO2ナノ多結晶体:超高靱性高硬度を有する新材料の開発(研究代表者:西山宣正)の支援のもと行われました.


                             
硬くて割れにくいセラミックス(ナノ多結晶スティショバイト)高圧合成に成功
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