昨年から準備をすすめてきた、GRCと北京大学理論応用地球物理学研究所(ITAG)との第1回シンポジウムが北京大学で開催されました。GRC側からはスタッフ、客員研究員、ポスドク、大学院生など総勢20名あまり、またITAGおよび北京の他研究機関の研究者や大学院生など50名近くの参加があり、台風18号の影響による日程の変更が余儀なくされたものの、ほぼ当初の予定どおり会議を終えることができました。
 本シンポジウムは、従来から地震学グループを中心に緊密な共同研究がおこなわれてきた両研究センターの研究交流を一層促進するとともに、近い将来学術交流協定締結をめざすための第1歩という目的もありました。また、GRCの超高圧グループを中心に昨年度から開始されている、「学術創成研究」の成果発表と研究のさらなる発展も意図しており、これらの点で非常に大きな成果がありました。
 このような研究面以外に、本シンポジウムはGRCの大学院生や博士研究員などの若手研究者の意識改革もその大きな目的と位置付けておりました。中国の中でもトップの北京大学の大学院生や若手研究者の状況を目にすることにより、少しでもGRCの若手が発奮し、より高いレベルをめざす契機となればとの思いでした。 私自身北京を訪れるのは初めてでしたが、大学全体が一つの街を形成しているような北京大学のスケールには圧倒されました。学生は構内の寮住まいで、数えきれないくらいの学生食堂や銭湯(?)まで揃った環境の中、非常に濃密な人間関係を通じて切磋琢磨している様子は、高度成長期の日本の学生生活を彷佛とさせるものでした。
 ただ、確かにキャンパスは広大で建物は立派なものの、研究装置などのハードウエアに関しては必ずしも十分ではないようでした。地方大学とはいえ、この点では我々のほうが研究をすすめる上では有利な状況にあるようです。また教官に関しても、海外での長期研究生活経験者以外は、必ずしも全員が国際的にみて高い水準にあるとはいえないようにも見受けられました。
  しかし、学生の質の高さと熱心さは印象的でした。残念ながら今回は台風の影響により北京大学側の大学院生の発表の多くはキャンセルになり、十分な交流をおこなうことができませんでしたが、個人的に話したところでは大変礼儀正しくまた強い熱意が感じられました。偶然シンポジウムの最終日は"teacher's day"(教師節)ということで、終了後には大学院生が前に並び、代表者のお礼とともに全員が我々にも深々と頭をさげ、花まで贈呈いただいたのには大変感激しました。
 今回のシンポジウムは研究成果の発表と議論もさることながら、GRCとITAGのお互いのいい面と不十分な点が認識できたという点で、またそれらがかなり相補的であり両者の協力関係により互いに得るところが大きいと感じることができた点で、学術交流協定の締結にむけた重要なステップであったと思います。本シンポにご援助いただいた愛媛大学および学長・副学長には心より感謝いたします。



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入舩 徹男