バイロイト地球科学研究所20周年記念講演会


   写真1:エルミタージュ宮殿前での昼食会
 バイロイト地球科学研究所は、ドイツバイエルン地方の小さな都市バイロイトに設立された、高圧地球科学を中心とした研究所です。バイロイト大学の研究所として20年前に設立されましたが、今やヨーロッパにおける地球深部科学分野の中心として大きな発展を遂げています。去る6月12、 13日と研究所設立20周年記念講演会があり、日本からは筆者と東大物性研究所の八木健彦教授が招待講演をおこないました。講演会はエルミタージュというバイロイト郊外の古い宮殿内でおこなわれ、ヨーロッパやアメリカなどを中心とした研究者約100名が集まり、講演会やポスター発表会、また会食もおこなわれました(写真1)。
  筆者はこの会議の後も数日間地球科学研究所に滞在し、研究所のセミナーでも講演をおこないました。この間研究所内をくまなく見学し、また教官や研究員以外にも支援スタッフや学生など、様々な構成員と話しをする機会が得られました。超高圧関連の設備やスタッフとともに、分析装置群、中でも様々な波長領域の分光に関連した独自の装置とスタッフが非常に充実しているのが、大変印象的でした。ライカやツアイスに代表されるような、戦前から世界をリードしてきたドイツ光学の伝統の片鱗がうかがえたような気がします。
  この研究所では、マイスターの伝統を持つテクニカルスタッフの充実もさることながら、来訪者に対しても専任のスタッフがつき、各研究室や装置の説明を系統的におこなう体制ができている点には驚きました。また、研究者の転出などにより使わなくなった装置を、他の研究機関に中古として売ることを当然のようにおこなっている合理性は、我が国の大学も少し見習うべきではないかという思いを強くしました。
  バイロイト大学自体は愛媛大学に比べても小規模な、地方の1大学という印象を受けました。しかし、この研究所はわずか20年の間に、地球深部科学分野では世界のトップクラスとして認知されるにいたっています。GRCは設立後5年を経て、国内ではこの分野の拠点として認知されつつありますが、世界的にはまだまだよく知られていないのが現実です。今後10年程度の間に、GRCがこのような研究所と肩を並べるにはどうすればいいか、色々と思いをめぐらせる機会を与えられた点で今回の出張は大変意義深いものとなりました。
  写真2:ブラジルユニフォームを着てご満悦の筆者

  ところで今回の出張はワールドカップの真っ最中でした。残念ながらこの時期にドイツにいながら、テレビ観戦さえできない状態でしたが、街にあふれる様々な国旗やユニフォームを着た人々の様子から、雰囲気だけは味わうことができました(写真2)。夏時間のため夜9時を過ぎても明るい中、特にドイツが勝った日には夜中の3時頃まで町中大騒ぎでした。ワーグナーゆかりの18世紀に建てられたオペラハウスや、夏の音楽祭で有名な静かで落ち着いた雰囲気のバイロイトの街も、このときばかりはあちこちでクラクションの音が鳴り響き、ホテルのベッドに入っても眠ることができない程でした(入舩徹男)。



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