このたび本センターの非常勤研究員として採用していただきました、阪本志津枝です。 岩石学・鉱物学を専攻しています。鉱物の化学組成や微細構造から、鉱物が形成される にいたった履歴をよみとり、その鉱物が産出する地域が過去にどんな状態にあったのか を研究しています。特に、コスモクロア(kosmochlor: NaCrSi2O6)というNaとCrからなる輝石について研究を行っています。 コスモクロアは、1897年に隕石の中から初めてみつかった鉱物です。ギリシャ語で「宇宙 (cosmos)の緑(chlor)」という意味を表しており、エメラルドグリーンの 非常に美しい鉱物です。
 学部時代に、岡山県大佐山地域でこの鉱物に出会ってから現在まで研究を続けています。 コスモクロアを産出する大佐山地域の地質調査からはじめ、世界各地のコスモクロアの 記載、電子プローブマイクロアナライザーによる鉱物組成分析、分析装置つき透過型電 子顕微鏡による微細組織観察および微細領域組成分析、とkmスケールの研究からnmスケ ールの研究を行ってきました。
 最近の大きな成果は、コスモクロア-ディオプサイド(diopside: CaMgSi2O6)系単斜輝石において変調構造相をみいだしたことです 。変調構造というのは、鉱物を構成している最小単位である「単位格子」の非整数倍の大きさの格子が形成されている構造で、電子線やX線による回折パターンに衛星 反射が出現することにより観察されます。この構造の存在から、単斜輝石の相関係に新たな制約を与えることができました。
 今後は、合成実験を行い鉱物の生成条件に厳密な制約を与えたり、かんらん石やダイヤモンドといった鉱物に も目を向けたりしたいと考えています。
 どうぞよろしくお願いいたします。
  阪本 志津枝
(研究機関研究員)