4月から本センターの機関研究員として働くことになりました、臼井です。静岡県出身で、へび年A型、大好きなサッカー歴はなんと20年です。2006年3月に、金沢大学で博士(理学)を取得後、同年4月から2008年3月まで、国立極地研究所にて研究を行ってきました。まだまだ駆け出しの若輩者ですが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。
  私は地震学の分野から、地球深部の謎の解明に取り組んできました。私が生まれ育った静岡県は、地震は日常茶飯事でした。1989年の伊豆半島東方沖の群発地震の時には、毎日震度3〜4の地震が頻発し、その度に木造の我が家が悲鳴を上げました。静岡県は東海地震の想定震源域にあり、さらに富士山という日本一の火山が聳え、地震と火山という自然災害の脅威を強く意識せざるを得ない場所です。そんな環境で育ち「自然」=「地球」に興味を持ち始め、地震学を学ぼうと志しました。
  地震学には様々な分野の研究があります。地震がなぜ・いつ起こるのか?など地震そのものについての研究や、地震波形から地球の中身を調べる研究があります。私の研究は後者で、地震波速度不均質が極めて強い上部・下部マントルに焦点を当てて研究を行ってきました。全マントルトモグラフィーなどで見られるこの特徴は、マントル対流を反映しているものと考えられています。しかし、実際にはまだまだ解像度が悪く、多くは謎に包まれています。誰も注目しなかった領域を調査し、できるだけ新しい手法を開発して、地震波速度構造モデル"USUIモデル"を世に送り出すことが、私の研究活動の一番の目標です。
  これまでは南極の地震波形データを用いて、南極大陸及び南極海の下のマントルについて調べました。上部マントルについては、地震波速度異方性を調査し、南極の過去のテクトニック史を含めて、その形成原因を推定しました。異方性の研究から南極では、過去の変動が化石的に残っている貴重な場所であることが明らかになりました。下部マントルについては、D"層の異方性及び速度不連続面を持つS波の地震波速度"USUIモデル"を求めることに成功しました。この"USUIモデル"から、南極周辺の下の最下部マントルは、世界的に見ても地震波速度が速く、温度が冷たく、分厚いD"層があることを発見しました。
  これらの成果を踏まえ、今後はより浅い地殻の異方性を調査し、南極下の地殻から最下部マントルまでの異方性構造を丸裸にしたいと考えています。さらに、最下部マントルのD"層における地震波速度構造と、物質科学から見たポストペロブスカイトから、地球のダイナミクスに関する新しい発見ができればいいと考えています。特にD"層内の速度勾配、核−マントル境界での速度、地震波不連続面での速度増加及び減少に注目し、これらの違いが温度によるものなのか、組成不均質なのか、外核との相互作用や部分溶融の存在など、様々な問題を解決していきたいと考えています。 本センターは、第一線で活躍している様々な分野の研究者がいらっしゃるので、これまで以上にたくさん議論ができて大変嬉しく思います。地震学だけではなく、幅を広げて研究者としての目を養っていきたいと思います。地震が起こると揺れは地球内部を伝わります。その揺れ具合を丁寧に調べ、実際に行くことができない深さの場所に思いを馳せながら、酒を愉しみたいと思います。



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    臼井 佑介
  (研究機関研究員)