AGU(アメリカ地球物理学連合) 2002 Fall Meeting が12月6日から10日まで、サンフランシスコで開催された。AGUでは春と秋の2回、会議が行われている。中でも秋の会議は大規模なもので、アメリカはもちろんのこと、日本、ヨーロッパ各国からも多くの"大"先生が一同に会する盛大なものである。私は数年前に一度参加したことがあり、今回は2回目の参加となった。
 私はMineral and Rock Physicsのセッションでポスター発表を行うことになっており、縦120cm×横180cmという巨大なポスターを手に日本を発った。アメリカに限ったことではないが、同時多発テロ以降、空港でのセキュリティは非常に厳しいものとなっている。さて、手に持った巨大なポスターはどうだろうか、と一抹の不安をもっての出発となったが、サンフランシスコに到着したとたん不安は消え去った。というのも、手に巨大なポスターを持った人の数の多いこと・・・。これからも、この会議の大きさが覗えた。
 さて、私とGRCセンター長、さらにサンフランシスコで合流したGRC学振DC研究員の肥後さん(ニューヨーク州立大に長期滞在中)の研究発表はともに2日目であった。ポスター会場は体育館以上の広さのホールが2箇所あてがわれていて、「ご近所さん」とは十分に間隔が保たれている。そのため、窮屈な思いをすることなく「お客さん」と議論することができる。私も多くの"大"先生からご意見・ご感想をいただき、非常に勉強になった。ただ、私の英語力では「議論できた」とは言えず、語学力の大切さを再認識した。
 口頭発表は、ポスター発表と平行して行われた。中でも、地球内部物理学の草分けであるF. Birchの論文(Elasticity and constitution of the Earth's interior, J. Geophys. Res., 1952)発表 50周年のシンポジウムセッションが大変印象に残っている。50年前のこの論文と比較して、今では何が明らかになり、また何が明らかになっていないのか、ということが小気味よいプレゼンテーションで示されていった。今回の会議では、D"層から核にかけての話題が非常に多かった。また今回はダイヤモンドアンビルセルを用いた研究が非常に多いという印象を受けた。さらに、装置や測定手法にも目的に応じた開発がなされており、中性子実験や弾性定数測定に関する報告も多くあった。
 今回この会議に参加させていただくことができ、 大変感謝している。この会議で学んだことを糧にしていきたいと強く思う。(一色麻衣子:理工学研究科D2)









Stony Brook滞在記    

  ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校はマンハッタンから東へ65マイル、ニューヨーク郊外の高級住宅地の中にあり、自然が豊かで研究には絶好の環境でした。外を歩くと至る所にリスがいるような所です。ここで、私は8月19日〜12月13日の約4ヶ月間、日米共同研究の一環として滞在し研究してきました。しかし、学ばなければならないことはとても多く、忙しい毎日でまわりを見る余裕はあまりなかったかもしれません。
 今回の私の目的は、マルチアンビル型高圧発生装置を用いた超音波速度測定の技術習得と、 実際にいくつかの高圧鉱物を合成して高圧下での弾性波速度の測定を行うということです。このような実験は高圧実験と地震波で観測された地球内部のデータをつなぐ大変有力な実験方法で、ニューヨーク州立大学は世界をリードした研究がされています。最終的にはこの技術をSPring-8の放射光X線回折実験と結び付けて、高温高圧下での高圧相の弾性波速度を精密に決定することが目的です。
 実験は当初、失敗続きでこちらのスタッフの方々に暗い顔をして相談する毎日でした、 しかし、後半は次第にデータを取ることに成功し、そのうちの一つは12月6日〜10日にサンフランシスコで行われた アメリカ地球物理連合(AGU)総会で発表することができました。こうした失敗も後の実験で非常にためになり、いい経験だったと思います。

 私自身、英語があまり得意なほうではないのですが、直接指導にあたってくれたLi 先生はじめ、 多くのスタッフの方々がとても親切におしえてくれ、短期間でありながらも多くの結果を得ることができました。 また、サンフランシスコでのAGUに参加でき、とても有意義な意見を聞け、またほんの少しですがアメリカ観光でリフレッシュでき、 この4ヶ月間は私にとってとても密度の濃い実りあるものでした。
 これからは今回学んだことを元に、日本での実験準備にまだまだ忙しい日々が続きそうです。 最後になりましたが、このような機会を与えていただいたGRCの入舩・井上先生と日本学術振興会に感謝いたします。 (肥後祐司:GRC学振DC特別研究員・理工学研究科D2)

  AGU 2002 Fall Meeting