第112回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
1. 地球内部粒界薄膜水の物性と地球ダイナミクス
−薄膜水はかたい?−
Physicochemistry of grain boundary thin film water and
geodynamics -"Hard" constrained water in the earth's interior?-
講師:中嶋 悟
(東京工業大学大学院理工学研究科教員)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2004年11月12日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟 201教室
要 旨
変成岩・変形岩中の水の化学種とその分布を,顕微赤外分光法によって調べたところ,
石英格子欠陥のOH,流体包有物H2Oの他,間隙や結晶粒界にH2Oが存在することが示唆
された.微細な多結晶チャート質石英部分の分子状水H2Oの含有量は,変成度,変形度
が増大するにつれて増加した.これを結晶粒界の幾何学的なモデルで解析したとこ
ろ,含水量は,粒径に反比例する関係で説明ができ,また結晶粒界の幅は平均10nm程
度と示唆された.また,このような狭い間隙・粒界の水の赤外吸収スペクトルは,自
由な液体水と異なり,氷に近く,水素結合距離の短い構造化されたものであると示唆
された.人工の薄膜水の赤外その場観測を行ったところ.水の構造化は,鉱物の種
類,表面の結晶方位,水の化学組成さらには温度によって変化することがわかった.
このような異なる物性の水の存在は,地殻の強度に影響するほか,流体の流れにも大
きな変化をもたらすと考えられ,地球ダイナミクスを考える上で再評価すべきもので
ある.
問い合わせ先:山崎 大輔 TEL (089)927-8408
E-mail yamazaki@sci.ehime-u.ac.jp