第127回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
「フランボイダルパイライトにおけるマイクロクリスタル
の自己組織化構造」
"Microarchitecture of framboidal pyrite"
講師:大藤弘明(GRC研究機関研究員)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2005年5月27日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟 101教室 ←今年度より変更


要 旨
黄鉄鉱(パイライト,FeS2)は天然においてもっとも普遍的な硫化鉄鉱物であり,熱水・金属鉱床中や火成岩,
堆積岩中などに広く産するほか,現世堆積物中にも自生鉱物としてごく普通に認められる.特に,堆積岩(始生代〜)中や堆積物中(〜現世)に含まれる黄鉄鉱は,
しばしば顕微的な木苺状の集合形態を示すことで知られ,「木苺」を意味するフランス語,"framboise"にちなんで,フランボイダルパイライト
(framboidal pyrite)と呼ばれている.フランボイダルパイライトは,直径<1から250μmほど(多くは100μm以下)の球形(フランボイド)をなし,
サイズのほぼ均質な多数(102〜107個)のマイクロクリスタル(径約0.1〜10μm)より構成される.フランボイダルパイライトの形成過程については,
「バクテリア,またはそのコロニーの鉱化・化石化説」や「腐植土起源の有機質粒子の置換形成説」,「前駆体鉱物(グリグ鉱, Fe3S4など)の磁力凝集説」など,
多くの議論があるがどれも決定的ではなく,その本質的なメカニズムは依然として謎に包まれたままである.
カーディフ大学博士課程では,フランボイドの組織化過程を理解すべく,鉱物学,結晶学,地球化学的見地より総合的な研究を行った.主な手法として,
SEM,TEM,EDS,単結晶XRD,後方散乱電子線回折法,及び黄鉄鉱水熱合成のために種々のバッチ実験法,拡散実験法を利用した.その結果,
(1)フランボイドの形成には黄鉄鉱核形成速度の増進(高過飽和条件)が不可欠であり,実験的にはpH-Eh条件,S0,Sn2-イオンなどによる触媒効果により再現が可能なこと,
(2) 核形成・結晶成長速度などに関連して異なる3タイプの充填構造(不規則,立方充填,20面体充填)をとること,(3) 自己組織化作用には結晶学的な操作は必要でなく,
マイクロクリスタルの表面エネルギーの最小化に起因する凝集作用が密接に関わることなどを明らかにした.
博士課程で行ったこれらの研究プロジェクトのうち,本講演ではフランボイダルパイライトにおけるマイクロクリスタルの規則配列構造について,結晶形態学,
結晶学的見地から検討した例を紹介する.
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp