第138回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
「遷移層不連続面の観測を用いた3つの話題 」
"Three topics inferred from the seismological investigation
of the mantle discontinuities"
講師:山田 朗(GRC教員)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2005年11月4日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟 301教室
要 旨
マントル遷移層の地震学的不連続面,410kmと660km不連続面(以下,410,660)はオリビンの相転移面であり,高圧実験で求められたクラペイロン勾配を用いて,その凹凸は温度異常として解釈されてきた.実際に,沈み込むスラブ近傍では410が上昇し,660が下降するという観測結果で定性的には矛盾の無い研究結果が報告されている.昨今では,この定常(平衡)状態での記述から,さらにダイナミクスの要素(上昇・下降流の運動)や組成の要素(水の効果)を考慮した議論がなされており,今回は以下の3つのトピックに関する最近の研究結果をレビューする.
(1) 準安定オリビン:沈み込むスラブ内部は,その低温のために410での相転移が起こせずにα相のまま準安定層となっている可能性が指摘されているが,明確な地震学的検証例はない.スラブ内では410が観測されない,ということがその傍証となり,フィジー・トンガ地域での例を示す.
(2) 上昇流に伴う不連続面の厚さ変化:660を上昇流が通過する場合,その速度に応じて不連続面の厚さが変化する,という理論的報告がある.この場合,速度が大きいほど不連続面が不鮮明になると予想される.今回は大西洋中央海嶺下での660の観測から,海嶺下の上昇流の可能性を示す.
(3) 遷移層での含水量の推定: 地震学的な観測結果(地震波速度異常,410・660の凹凸)と高圧実験の結果をコンパイルして遷移層での含水量を見積もる試みが始まっている.現在では含水相を弾性的に扱っているが,非弾性効果を考慮した場合の予想について議論する.
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp