第147回ジオダイナミクスセミナー
   Geodynamics Seminar

 「下部マントル条件下における(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイト
  とマグネシオウスタイト間 のFe-Mg分配」
  "Fe-Mg partitioning between (Mg,Fe)SiO3-perovskite and
  magnesiowustite under lower mantle condition"

        講師:大森美紀(愛媛大学修士1年)
       
                            
    
     主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
     日時 : 2006年3月3日(金)17:00〜
     場所 : 愛媛大学理学部講義棟 301教室
要 旨
  下部マントルは主に(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイトとマグネシオウスタイトで構成され ていると考えられており、これらの相中のFe含有量は密度や相転移などに影響を及ぼ すと考えられる。したがって、これらの相中のFe含有量を知ることはマントルダイナ ミクスを理解するうえで非常に重要である。このような理由から、(Mg,Fe)SiO3ペロ ブスカイトとマグネシオウスタイト間のFeとMg分配については、これまでに多くの研 究がなされている。しかし、温度依存性については系統的に調べられたものは少な い。そこで本研究では、高温高圧実験により、広い温度範囲で(Mg,Fe)SiO3ペロブス カイトとマグネシオウスタイト間のFeとMgの分配を決定した。
 高温高圧実験には愛媛大学設置のマルチアンビル型高圧発生装置を使用し、〜24 GPa、1400℃から2000℃の条件下で実験を行った。出発物質には(Mg0.91Fe0.09)2SiO4 組成のSan Carlos olivine、合成したFo80、Fo70、Fo60を粉末にしたものを使用し た。回収した試料はSEM、EDS、微小部X線回折装置を用いて相の同定と化学組成の分 析を行った。また、新たにFE-SEMを用い、低加速電圧でのより微小な領域での定量分 析を試みた。
 本実験の結果、(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイトとマグネシオウスタイト間の分配係数KD= (Fe/Mg)Pv/ (Fe/Mg)Mwは温度の増加と共に大きくなった。また、ある一つの温度にお いて、温度保持時間によってKDは変化した。
 本研究の結果から、温度は(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイトとマグネシオウスタイト間 のFeとMgの分配に大きく影響を及ぼすことがわかった。これは、下部マントルのダイ ナミクスを推定する場合、この効果を考慮する必要があることを示している。また、 温度保持時間による分配係数の変化から、相間の化学平衡状態について検討する。





        問い合わせ先:土屋 卓久 TEL   (089)927-8198
                      E-mail  takut@sci.ehime-u.ac.jp


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