第148回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
「月震波トモグラフィーによる月の内部構造解析」
"Seismic tomography of the Moon"
講師:沼川 広太(愛媛大学修士1年)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2006年3月10日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟 301教室
要 旨
地球深部の構造を探る手段として最も有効なのが地震波トモグラフィー法であ
る。1980年代以降、これまでに多くの研究者がこの手法を用いて地球内部の地震
波速度構造を求めてきた。一方、月の内部構造についてはアポロ地震計によって
得られた月震データの解析によりNakamura (1983)、Goins et al. (1981)、 Lognonee
et al. (2003)ら多くの研究によって一次元速度構造の解明が進められ てきたが、三次元的なアプローチを試みるにはいたっていない。本研究では、彼
らの一次元速度モデルを使用し月についてP波・S波トモグラフィーを行い、月の
表側深部の三次元速度構造を解析した。また、さらに精度の向上や三次元可視化
を図り、月の深部について検討した。
トモグラフィーにはZhao (2001)によるグローバル地震波トモグラフィー法を用
いた。またアポロ計画によって得られ、Nakamura (2005)、Lognonee et al.
(2003)によって決定された月震による走時データを使用した。
その結果、特にアポロ観測地点下のマントルにおいて解像の良いトモグラフィー
像が得られ、地殻における高不均質、上部マントルの低速度以上層など、地殻・
マントル中における速度不均質をイメージングすることができた。これによる
と、下部マントルでは不均質性は小さく、既に提唱されている深発月震の発生メ
カニズムと一致している。
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp