第152回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
「無水かつメルトのない条件下における島弧下部地殻での
低速度異常形成の可能性:下部地殻岩の弾性波速度測定
からの制約」
"Low velocity anomaly in arc lower crust under dry and no partial
melting conditions: Constraints from laboratory measurements of
elastic wave velocities in lower crustal rocks"
講師:河野義生(GRC研究機関研究員)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2006年5月12日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟 101教室
要 旨
島弧地殻深部における低速度異常の原因解明は地殻深部の構造・状態を理 解するための鍵となる課題の1つである.低速度異常の原因としてこれまで
の研究の多くは水,メルトの存在を提案している(例えば,Zhao et al., 2002).一方,高温条件下におけるP波速度測定の結果,斜長石に富む下部
地殻岩では 400-500℃以上で急激なP波速度低下が起こることが明らかと なっており(Kono
et al., 2004),水,メルトのない条件でも低速度異常が 形成する可能性が指摘されている.本研究では斜長石に富む下部地殻岩の1
つであるガブロノーライトと4種類の異なる組成を持つ斜長岩の弾性波速度 測定を行った結果,中間的な斜長石において400-500℃以上の高温で急激な
弾性波速度低下が起こることが明らかとなった.ガブロノーライトの実験 から決定した弾性波速度温度圧力依存性を用いて地殻条件における弾性波
速度変化を見積もった結果,高熱流量地域では最大2〜4%の弾性波速度低下 が起きることが明らかとなった.本研究で得られた中間的な組成を持つ斜
長石における急激な弾性波速度低下は,斜長石に富むと予想される下部地 殻の弾性波速度構造に大きな影響を与え,これまで提案されている水,メ
ルトに加えて,新たな低速度異常原因となると考えられる.
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp