第155回ジオダイナミクスセミナー
   Geodynamics Seminar

 
「焼結ダイヤモンドアンビルを用いたマルチアンビル装置による
 高温高圧実験の現状と今後の展望」
 "High-pressure and high-temperature experiments using sintered
  diamond anvils in multi-anvil apparatus"

       講師:丹下慶範(GRC特定領域研究員)


    主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
      日時 : 2006年6月9日(金)17:00〜
      場所 : 愛媛大学理学部講義棟 101教室




要 旨
 地球深部を研究対象とした高温高圧実験において実験圧力の拡大は、再現できる 地球内部条件の拡大を意味する。現在地球内部、特に下部マントル以深の条件を 静的に再現することのできる実験装置としては、主にダイヤモンド・アンビル・ セル(DAC)とマルチアンビル装置があげられる。マルチアンビル装置は発生可 能圧力の面ではDACに大きく引き離されているものの、大容量試料・安定加熱な ど、レーザー加熱DACにない特色を有し、多成分多相系の実験岩石学的研究には 欠かせないツールである。従ってマルチアンビル装置の発生可能圧力範囲を拡大 することは、地球深部物質科学にとって大きな意義がある。
 マルチアンビル装置と焼結ダイヤモンドアンビルを使用することで発生圧力の拡 大を目指す実験技術開発は、岡山大学・固体地球研究センター(ISEI)および愛 媛大学・地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)を中心として行われてお り、近年急速に進歩をとげている。昨年度より我々が行っている大型放射光施設 SPring-8を利用した研究課題「焼結ダイヤモンドおよびマルチアンビル装置を用 いた70 GPaを超える超高圧発生技術の開発」では、圧力媒体やガスケットの素材 やサイズの変化にともなう圧力発生効率、および最高到達圧力の変化を明瞭に観 察することができた。現在、先端切り欠き長1.5 mmの焼結ダイヤモンドアンビル を用い、室温下では60 GPa程度の圧力発生が可能であり、高温下でも1500℃・55 GPaという温度圧力条件の発生が達成されている。発表ではそこに至るまでの過 程を報告するとともに、さらなる高圧発生を目指した今後の指針を示す。


        問い合わせ先:土屋 卓久  TEL   (089)927-8198
                       E-mail  takut@sci.ehime-u.ac.jp