第168回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
「(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイトとマグネシオウスタイト間におけるFe-Mg分配〜温度・時間・組成依存性〜」
"Fe-Mg partitioning between (Mg,Fe)SiO3-perovskite and magnesiowustite
under lower mantle condition"
講師:大森美紀(愛媛大学修士2年)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2006年12月22日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟 101教室
要 旨
下部マントルは主に(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイト(pv)とマグネシオウスタイト(mw)で構成されていると考えられており、これらの相中のFe含有量は密度や相転移などに影響を及ぼすと考えられる。したがって、これらの相中のFe含有量を知ることはマントルダイナミクスを理解するうえで非常に重要である。このような理由から、pvとmw間のFe-Mg分配についてはこれまでに多くの研究がなされている。しかし、温度依存性については系統的に調べられたものは少ない。そこで本研究では、高温高圧実験により、広い温度範囲でpvとmw間のFe-Mgの分配を決定した。
高温高圧実験には愛媛大学設置のマルチアンビル型高圧発生装置を使用し、約24 GPa、1400℃から2000℃の条件下で実験を行った。出発物質には(Mg0.91Fe0.09)2SiO4組成のSan Carlos olivine、合成したFo80、Fo70、Fo60を粉末にしたものを使用した。回収した試料はSEM、EDS、微小部X線回折装置を用いて相の同定と化学組成の分析を行った。また、新たにFE-SEMを用いて低加速電圧でのより微小な領域での定量分析を試みた。 本実験の結果、pvとmw間の分配係数KD=(Fe/Mg)Pv/ (Fe/Mg)Mwは温度の増加と共に大きくなった。また、ある一つの温度において、KDは温度保持時間によって変化した。
本研究の結果から、温度はpvとmw間のFe-Mgの分配に大きく影響を及ぼすことがわかった。これは、下部マントルのダイナミクスを推定する場合、この効果を考慮する必要があることを示している。また、温度保持時間による分配係数の変化から、相間の化学平衡状態について検討する。
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp