第188回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
「マントル最下部の相転移と地震学的観測」
"Phase transition in the lowermost mantle and
its seismological observations"
講師:山田 朗(GRC教員)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2007年10月12日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟 101室
要 旨
マントル最下部のD"層は地表付近のリソスフェアと比肩しうるほどに横方向の
構造不均質の強い領域である.それは,マントル対流の上下の境界層という意味
で当然だが,マントル最下部の構造に関する観測は,地表でのそれと比べ,手法
の種類・情報量・解像度の点ではるかに厳しい.特に,波長1000km以下の構造推
定には地震学的(特に実体波)な手法に依存しており,また,得られる観測を統一
的に説明できるD"層の解釈も確定していない.
しかし,近年のPv-pPv相転移の発見(Murakami et al. [2004], Tsuchiya et al. [2004]など)により,上記が解決される可能性が出てきた.D"層上面とされ る地震学的不連続面の深さは相転移の予想される深さとほぼ一致している(注: 相転移が実証される以前に,Sidorin et al. [1998,1999]によって予想されてい た).また,予想される相転移のクラペイロン勾配が正の大きな値を持つこと と,温度境界層でもあるD"層内で急激な温度上昇が見込まれることから,CMB直 上でもう一度相転移を起こしてPvに戻るという"Double-Crossing model" (Hernlund and Labrosse, 2005)も提唱されている.この相転移を通じて,最下 部マントルの構造・組成・ダイナミクスに関する新しい解釈が進んでいる.
本セミナーでは,地震学的な観測によるD"層の構造推定とPv-pPv相転移を用い
た解釈,またそこから推測しうるマントル最下部,外核の構造やダイナミクスに
ついて紹介する.特に,CMB直上の超低速度層(ULVZ)やCMBとICBでの温度推定と
それに付随する外核内の軽元素の推定についても言及する.
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp