第195回ジオダイナミクスセミナー
   Geodynamics Seminar

「マントル遷移層から下部マントルにおける水の分配」
"Partitioning of H2O in the mantle transition zone and lower mantle"
        
勝田雅典(愛媛大学修士2年)
   主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
   日時 : 2007年12月21日(金)17:00〜
   場所 : 愛媛大学理学部講義棟 101室

              

要 旨
  地球は進化の過程において、マントルに幾分かの水を保持していると考えられている。また、現在でも冷たいスラブでは含水層が安定に存在できるので、マントル深部まで水を運搬することができる (Ohtani et al.,2004)。水の存在は溶融温度や、レオロジー、電気伝導度、地震波側度に大きな影響を与えるので、存在量や鉱物間の水の存在量を調べることは重要である。これまでの研究で上部マントルと下部マントルの6割を占めるカンラン石の高圧相に水が入ることがわかっており、特にマントル遷移層を構成するwadsleyite、ringwooditeには~3 wt% の水を含むことができ、マントル遷移層は多くの水を保持している可能性がある(Inoue et al.,1995,1998, Kohlstedt et al.,1996)。また、地震学的観測から、Suetsugu et al. (2006) は日本島弧やフィリピン海の下などの古くて冷たいスラブが沈み込む場所では、マントル遷移層で低速度が観測されており、300-700 K低く、水が 1.0-1.5 wt% あれば説明できるとした。これまでの研究では出発物質に端成分を使用しているものが多く、共存する鉱物間の分配があまり求められていない。また、最近の研究で下部マントルを構成するperovskiteにも少量の水が入ることがわかっている。本研究ではモデルマントル組成であるパイロライト(Mg-Fe-Si-Al-Ca) を用いマントル遷移層と下部マントルを構成する鉱物を合成し含水量を2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて測定し、鉱物間の水の分配を求めた。wadsleyite、ringwooditeとgarnetの水の分配は8~2と温度の増加と共に減少した。ringowoodite-perovskiteの分配は~5となり、井上(2004)でもとめられた値よりも低くなった。このことから下部マントルにはより多くの水が供給されることが示唆される。また、garnet-stishoviteは~1.5、perovskite- stishoviteは~0.8となった。詳しい内容は当日発表する。


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