第197回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
「PcP,PkiKP波を用いた日本列島周辺下におけるCMBとICBの構造推定」
"Structures of CMB and ICB regions beneath the Japan Islands by using PcP and PKiKP waves "
柴田直秀(愛媛大学修士1年)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2008年1月25日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟 101教室
要 旨
内核の組成はほぼ純粋な鉄-ニッケル合金であるのに対し、外核は不純物として、ケイ素、酸素、炭素、硫黄のような軽元素を含んでいることが知られている。また、液体核が冷えて固まり固体内核を生成する際に,ICBで排出された軽元素は外核最上部へ上昇する.その一連の過程において組成対流を引き起こすと考えられている。ゆえに組成対流の上下の境界であるCMBとICBの構造を推定することは地球ダイナミクスを知る上で重要である。
本研究ではCMBで反射するPcP波、ICBで反射するPKiKP波を用いることによって これら上下の境界の構造を推定する。震央距離が大きくなるとPcPとPKiKPのマントル内の波線経路の違いが大きくなってしまうため,マントル内の強い不均質構造による影響を受けてしまう。これまでになされてきた研究では震央距離が30°以上のPcP, PKiKPのデータが多くマントルの不均質構造の影響を強く受けるためにPcPとPKiKPの正確な振幅比と相対走時残差が得られたとは言えなかった。本研究では,ほぼ鉛直に伝播する波線経路を用いることによってPcPとPKiKPのマントル内における不均質の影響を相殺することが可能となり、CMBからICBまでの構造をより正確に推定することができた。
解析に使用した地震波形はHi-net で記録された上下動成分である。2000年10
月から2007年9月までの期間でマグニチュードが5.5以上、震央距離が30°以下、深さが100
km以深の地震からS/N比の良いものを用いた。PcPとPKiKPを同時に検出できた地震の数は11個であった。解析にあたりHi-net観測点を10個のサブアレイに分割した。これらの地震のサブアレイから、振幅比と相対走時残差のデータが29組得られた。
その結果、PKiKP/PcP振幅比から得られた値はPREMによる予想値と良い一致を示し、Koper and Pyle (2004)や,Cao and Romanowicz (2004)による値とも良い一致を示した。PKiKP-PcP相対走時残差はPREMの予測とはおよそ-0.5〜0秒のずれ があることが分かった。残差の値に震央距離による相関は見られなかった。この残差の値を説明するにはCMBもしくはICBに構造の異常があることが考えられるが、本研究ではそれぞれについて場合分けをすることで検証を行った。その結果、CMBに起因する異常であることが推測される。
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp
