第208回ジオダイナミクスセミナー
   Geodynamics Seminar

「MgSiO3-Al2O3系におけるポストペロヴスカイト相転移」
"Perovskite and post perovskite phase relation in the
MgSiO
3-Al2O3 system"

土屋 旬(学振特別研究員, GRC)


   主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
   日時 : 2008年7月11日(金) 17:00〜
   場所 : 愛媛大学理学部講義棟1F101室

              

要 旨
  地球下部マントルでは主要構成物質である(Mg,Fe)SiO3に数モル%のAl2O3が固溶していると考えられている。そのためMgSiO3の体積や弾性などの物性や、ポストペロヴスカイト相転移境界などの熱力学的安定性へのAlの固溶効果が現在精力的に調べられ、その結果からマントル深部の化学不均質とD’’不連続面の深さ変化や地震波速度異常の関連性が盛んに論じられている。特にポストペロヴスカイト転移圧に対しては、計算・実験の両面から共にAlの固溶により相転移圧が高圧側に急激にシフトし、非常に広い二相共存領域が出現すると報告されてきた。しかしもしこれが正しければ、相転移は二相共存領域の中を横切って徐々に進行するために相転移に伴い不連続的な地震波速度変化は生じなくなり、観測と矛盾する結果が得られることになる。確かに我々がこれまで局所密度近似に基づき理論的に求めたMgSiO3、Al2O3端成分のポストペロヴスカイト転移圧は、T=0K条件下でそれぞれ100GPa、150GPaであり、したがってAlの固溶が相転移圧を大きく上昇させるという結果と調和的であるように見える。しかし高温下では前者の相転移境界が正に、後者の相転移境界が負に大きなクラペイロン勾配を持つため、T=3000Kでは122GPa、119GPaとほぼ同じ相転移圧となり、ポストペロヴスカイト転移圧に対するAlの固溶効果は高温では小さくなる可能性がある。そこで本研究では高温・高圧下における二成分固溶系熱力学の第一原理計算法を構築し、端成分のみならずMgSiO3-Al2O3系の中間組成全域にわたって相平衡の予測をおこなった。この過程において、従来不明であった斜方ペロヴスカイト構造とRh2O3(II)型構造の結晶学的関係も明らかとなった。



        問い合わせ先:土屋 卓久  TEL   (089)927-8198
                       E-mail  takut@sci.ehime-u.ac.jp