第209回ジオダイナミクスセミナー
   Geodynamics Seminar

「MgOのP-V-T状態の統一的な解析:高温高圧実験における圧力スケール問題の解決」
"Unified analyses in P-V-T states of MgO: a solution for pressure-scale problems in high P-T experiments"


丹下慶範(GRC特定領域研究員)
   主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
   日時 : 2008年7月18日(金) 17:00〜
   場所 : 愛媛大学理学部講義棟1F101室

              

要 旨
  放射光を用いた高温高圧X線その場観察実験を行う際、内部標準物質のP-V-T状態 方程式が圧力スケールとして用いられる。MgOは単純な結晶構造や安定性といっ た圧力スケールとして求められる条件を備えており、Speziale et al. (2001)に よるMgOの状態方程式は圧力スケールとして現在広く用いられている(e.g. Feiet al.,2004; Hirose et al., 2008)。Speziale et al. (2001)はルビース ケールを基準とした室温における圧縮曲線と衝撃圧縮による高温高圧のデータを 元にし、グリュナイゼンパラメーターの体積依存性を表すq値にさらに体積依存 性を導入した複雑な形式を採用している。しかしながら二次スケールであるル ビーを基準にしている点や、一気圧における熱膨張・衝撃圧縮の温度を再現しな いなど多くの問題が存在する。我々は一気圧における熱膨張データと衝撃圧縮実 験データを統一的に解析し、全く他の圧力スケールに依存しない状態方程式を決 定した。P-V-T解析にはミー・グリュナイゼン方程式を用い、標準状態(室温・ 一気圧)における体積弾性率・デバイ温度・グリュナイゼンパラメーターを固定 することで、体積弾性率の圧力微分(K')とグリュナイゼンパラメーターの体積 依存性を表すパラメーター(q)を同時に決定した。得られた状態方程式は解析 に用いた熱膨張・衝撃圧縮データを再現するだけでなく、弾性波速度測定によっ て半絶対的に測定された室温の圧縮曲線ともよい一致を示した。発表では解析方 法の詳細とともに、既報の圧力スケールとの比較や本圧力スケールの使用による ポストスピネル・ポストペロブスカイト転移圧力の変化について触れる。



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