第211回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
"Computational study on the iron-bearing lower mantle phases"
土屋卓久(GRC教員)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2008年10月3日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟1F101室
要 旨
近年、実際の地球マントル内部に相当する圧力下で、鉱物中の鉄の高スピンから
低スピンへの転移が高圧実験により観測されるようになった。我々はこのいわゆ
る圧力誘起スピン転移について理論的な立場から研究を進めており、その中で一
つ成果のとして、ab initio onsite Uを用いたLDA+U法によりマグネシオウスタ
イトにおける混合スピン状態の出現を予言した。この状態はその後実験的にも確
かめられ、現在、地球下部マントルは鉄の電子状態の観点から見ればスピン遷移
層として特徴付けられるという、新たなパラダイムが生まれつつある。
混合スピン状態は新たなユニバーサリティークラスで特徴付けられ、密度、元素
分配、電気伝導率などさまざまな性質へ影響を及ぼす可能性から大きく注目され
ており、中でも弾性特性への影響は地球科学的にも最も重要な問題である。そこ
で混合スピン状態における弾性特性、特に最近高圧実験により報告された混合ス
ピン状態における顕著な弾性軟化のメカニズム、を明らかにするため、原子間距
離に応じてポテンシャルをスイッチするような力場モデルを作成し、系の応力応
答を調べた。今回の講演では、これらの計算結果とともに、より複雑な結晶場を
持つペロヴスカイトおよびポストペロヴスカイトのスピン転移のLDA+U計算の進
行状況についても紹介し、下部マントル物質のスピンクロスオーバーと実際の地
球深部現象との対応について議論する。
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp