第213回ジオダイナミクスセミナー
Geodynamics Seminar
「単色放射光とドリッカマー型装置を組み合わせた 実験技術開発
〜下部マントル条件下における変形実験を目指して〜」
"Technical development of a combination of monochromatic X-rays and
Drickamer apparatus toward deformation experiments under the Earth's lower
mantle conditions"
西山宣正(GRC教員)
主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
日時 : 2008年10月17日(金)17:00〜
場所 : 愛媛大学理学部講義棟1F101室
要 旨
地球深部における流動を理解するために、地球深部鉱物あるいは岩石の変形実験が行われている。高圧下における変形実験は技術的に困難なことが多く、その対象となる圧力領域、つまり実験的研究の対象となる深さは、実験技術に大きく制約される。2003年にDIA型変形実験装置が開発されて、深さ410から660 kmのマントル遷移層を変形実験の対象とする技術にはめどがついてきた。現在、この装置を利用した実験が行われつつある。しかしながら、深さ660 km以深の下部マントル条件下における変形実験を行うことは現在でもきわめて困難である。そこで、私は、下部マントル条件下における変形実験を可能にする装置としてドリッカマー型装置に注目し、この装置を単色放射光と組み合わせることにより、物質の変形を記述するのに必要なパラメーターである差応力と歪を下部マントル条件下で同時測定する実験技術開発に取り組んでいる。これまでに室温下ではあるが、32 GPaの圧力までの差応力・歪の同時測定が可能になっている。この技術を使用したMg2SiO4リングウッダイトの高圧下における差応力測定と、NaClのB1-B2相転移にともなう差応力変化の測定を行ったので、その結果を報告する。さらに現在は、ドリッカマー型アンビルセルを加圧するための小型油圧装置の開発にも取り組んでいる。この油圧装置は重さが約8kg と軽いため、容易に持ち運ぶことができる。近い将来には、この小型装置をSPring-8のビームラインに持ち込んで、変形実験を行うことを予定している。また、ドリッカマー型アンビルに、GRCで開発されたナノ多結晶ダイヤモンド焼結体(HIMEDIA)を使用することにより、下部マントル深部での実験も目指している。講演では、この最新の取り組みについても紹介する。
問い合わせ先:土屋 卓久 TEL (089)927-8198
E-mail takut@sci.ehime-u.ac.jp