第223回ジオダイナミクスセミナー
   Geodynamics Seminar

「地球深部のレオロジーの実験的研究」
"Experimental study on deep Earth rheology"


西原 遊
(愛媛大学上級研究員センター上級研究員(GRC関連))
   主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
   日時 : 2009年2月20日(金)17:00〜
   場所 : 愛媛大学理学部講義棟1F101室

              

要 旨
 カンラン石の応力緩和試験の最近の結果を中心としたこれまでの私の地球深部の レオロジーの実験的研究の取り組みと、今後の研究計画について講演する。地球 上部マントルの主要構成鉱物であるカンラン石の高温高圧下での応力緩和試験を 行い、比較的低温(400-1000℃)でのカンラン石のレオロジーの圧力依存性を約3 -11GPaの圧力下で調べた。実験はSPring-8、BL04B1に設置されているマルチアン ビル装置SPEED-1500を用いて、非等方的セル構成を用いて行った。差応力は、 40keVの単色光X線とイメージングプレートを用いて得られた試料の回折Debye環 のひずみから決定した。実験中の塑性歪速度は非常に小さく(歪速度 < 10-7 s-1)、ラジオグラフィーにより定量的に決定する ことができなかった。本研究で測定された高温高圧下での差応力は歪速度 = 10-7 s-1 での下限値を与えると考えられる。実験の結 果は、カンラン石の塑性強度が圧力の増加に伴って増加すること示しており、沈 み込む低温のスラブの受ける粘性抵抗は深さとともに増加する可能性が示唆され る。また、地球深部レオロジーをより定量的に制約するためには、高圧変形実験 装置と高輝度放射光X線を用いた応力、歪のその場観察を組み合わせた実験的研 究が理想的である。D-DIA型超高圧変形装置(MADONNA)を使ったマントル遷移層、 下部マントル条件での変形実験技術の確立とこの装置と組み合わせた放射光利用 の実現に向けて取り組んでいきたい。


        問い合わせ先:土屋 卓久  TEL   (089)927-8198
                       E-mail  takut@sci.ehime-u.ac.jp