第62回ジオダイナミクスセミナー
   Geodynamics Seminar

   「単斜輝石の微量元素組成からみたマントル
    −地殻遷移帯付近におけるマグマプロセス」
 “Magma Processes at Mantle - Crust Transition Zone
  deduced from Clinopyroxene REE composition”
         
      講師:佐野 栄(教育学部教官)


     主催 : 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
      日時 : 2003年2月28日(金)午後17時〜
     場所 : 愛媛大学理学部講義棟 
101教室

要 旨
 オフィオライトの超苦鉄質部,すなわちハルツバーガイト−ダナイト複合岩体は,最上部マントルからその上位のマントル−地殻漸移帯部に相当する.この超苦鉄質岩類に含まれる単斜輝石の希土類元素(REE)組成から,マントル−地殻漸移帯におけるメルトのふるまいについて検討をおこない,次のようなマグマプロセスを想定した.(1)溶け残りハルツバーガイトの形成:溶け残りハルツバーガイト中のLREE〜MREEに非常に枯渇した単斜輝石のREE組成は,ハルツバーガイトが,ザクロ石が安定なマントルからスピネルが安定な浅いマントルまでのマルチステージでの分別溶融過程で形成されたことを示唆する.(2)溶け残りマントルのrefertilization:最上部マントル中の単斜輝石は,相対的にLREEに富む.溶け残りマントルの最上部では,上位のダナイト部に存在するメルト成分の再添加により,refertilizationの効果が促進される.(3)マントル−地殻漸移帯部を構成するダナイト中を通過するメルトの多くは,非常に枯渇した成分からなる:ダナイト中に散在する単斜輝石のREE組成は海嶺下の集積岩中の単斜輝石に似た,LREEに枯渇した組成をもつものが多く,地表の海嶺性玄武岩のような組成を示すものは認められない.これらのダナイト中に散在する単斜輝石は集積相の粒間に滞留するメルトから晶出した.さらに,ダナイトのカンラン石の間隙には,非常に低いHREE濃度と高いLREE/HREE比を持つメルト成分も見つかっている。以上のことから,最上部マントル−地殻漸移帯付近には,地表の玄武岩組成を示すメルト成分は存在せず,むしろLREE ultra-depleted meltやLREE enriched melt成分など,多様な性格を有するメルトフラクションが漸移帯のダナイト中に滞留しており,これらが上昇の際,漸移帯最上部付近において集積されて,最終的に玄武岩組成のマグマを形成する.


        問い合わせ先:山崎 大輔  TEL   (089)927-8408
                    E-mail  yamazaki@sci.ehime-u.ac.jp