Nd:YAGレーザー精密切断装置(レーザー微細加工装置)
        
 本装置は、高温高圧実験に必要な小さな部品を製作するための装置です。再現性のある高温高圧実験を行うためには、圧力媒体、加熱部、試料容器などの部品を精密に作る必要があります。本装置は、特に金属箔などの精密加工を目的に導入された装置です。
 本装置はおもに3つの部分、1:レーザー発振機、2:加工光学系、3:加工ステージ、から構成されています。発信機からのレーザーを加工光学系で直径約20 mmに集光し、加工ステージ上に設置された被加工物に照射します。加工ステージはコンピューターで制御されており、この加工ステージを動かすことにより、被加工物を任意の2次元の形に切り出すことができます。
 本装置のもっとも大きな特徴は、レーザー発振機として紫外線パルスレーザー発振機を採用したことです。一般的なレーザーは連続光ですが、パルスレーザーは光がパルス状に発振されたもので、光のエネルギーを短い時間に被加工物に集中して投入することができるので、特に微細加工に適したレーザーです。本発振機は1パルスの持続時間が15 nsecのパルスレーザーを一秒間に10000回発振することができます。また、紫外線レーザーの波長は355 nmと、一般的な赤外線レーザー(波長1064 nm)よりもずっと短くなっています。波長の短いレーザー光は、加工物との相互作用が小さい(つまり加工時の発熱が小さい)ため、加工物である金属の酸化の程度を最小限に抑えることができます。また一般的な赤外線レーザーでは、酸化物やケイ酸塩、さまざまなガラスなどの加工を行うことは困難ですが、波長の短い紫外線レーザーを使うと、このようなものを加工することができます。
 現在、このレーザー加工装置を用いて、高温高圧実験に必要な金属部品の微細加工や、弾性波速度測定に使用するトランスデューサーの加工を行っています。今後、高圧鉱物の焼結多結晶試料の微細加工など、この装置の特徴を生かした加工を試してみたいと考えています。



 
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