集束イオンビーム加工装置(FIB)
        
 集束イオンビーム加工装置(FIB)は数100nmから数10nmに絞ったガリウムイオンビームを用いて断面観察用試料の加工を行う装置です。物質にイオンを照射すると物質を形成している原子あるいは分子がたたき出されるスパッタリング現象が生じます。FIB法では、試料にガリウムイオンビームを照射すると生じるスパッタリング現象を利用して加工を行います。同時にイオンビームを照射したときに発生する2次電子像(SIM像)を用いた試料観察も行うことも可能です。このSIM像を用いて表面側から試料を観察することで加工位置が確認できるため、100nmの精度での加工を施すことができます。
 本装置は、主に特定部位の観察が必要な透過型電子顕微鏡観察用の薄膜を作成することに使用されています。本装置には、バルク試料ホルダ[試料は最大8×8×0.5t(mm)まで]およびチップオンホルダ[2.5×1×0.4t(mm)以下]が付属しており、試料の形状や観察部位によって使い分けることができます。
 FIB法の特徴は、異なる相(材質)の集合体であっても均一な厚さの薄膜が作成できること、また数10μmほどの非常に小さな試料でさえも特定の部位で薄膜を作成するピンポイント加工ができることにあります。例えば、ダイヤモンドアンビルセルを用いて高温高圧下で合成した回収試料は、大きさが数10μmと非常に小さい上、試料内部に大きな温度勾配が生じています。このような試料の場合、従来行われていたアルゴンイオンビームを用いて加工を行うイオンミリング法では、試料内部の観察したい部位を特定することは非常に困難です。一方、FIB法は観察したい部位をサブミクロンオーダーで特定できるだけでなく、試料内部に生じた温度勾配も観察することができます。そのため、超高温高圧条件下で合成した試料の化学組成の定量的な議論を行う上で非常に有用な手法となります。



 
← 前へ戻る