電子線後方散乱回折装置(EBSD)
        
              図1
 
 本装置は、今年1月当センターに導入された電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)に新たに追加設置されました。結晶方位解析用の専用装置で、主に多結晶材料の物性評価に威力を発揮します。本装置は、蛍光板を連続スキャンする高感度カメラ(図1)と取り込んだ回折パターンを解析する画像処理用ハードウェアおよびソフトウェアより構成されます。EBSD法は、簡単にいうとSEM内に設置した試料表面から得られる電子線の回折像(菊池図形)から 結晶方位を求める手法です。菊池図形とは、入射電子が試料内で原子の熱振動による非弾性散乱を受けた後に、ブラッグ反射を起こすことによって生じる明暗の線やバンドのことで(図2)、結晶方位のわずかな変化でも図形の分布が敏感に変化します。この菊池図形の性質を利用して、数十〜数百nmという非常に小さな領域から得たパターンを高感度カメラで読み取り、コンピューターで菊池図形の面指数付けを行います(図2)。その面指数の 分布図から結晶方位をRGB表色系でビジュアル化します。
                図2

この一連の処理を完全自動、1/25秒〜ほどの速さで行うことができるので、例えば数十〜数百mm四方の試料領域についても、数時間程度で結晶方位(オリエンテーション)マップを得ることができます。また、Oxford社製のChannel 5.0ソフトウェアを使用して、分析したピクセル間のミスオリエンテーション角やそこに伴われる回転軸を求めたり、それらを様々な種類の極点図に投影できたりと、多機能にわたる画像・データ解析が可能です(図3)。
                   図3

 この技術を利用すれば、当センターで高温高圧合成された地球深部の鉱物試料について、物質の同定はもとより、粒子サイズの精密測定や結晶方位、結晶粒界に伴われるミスオリエンテーションの解析などを行うことができます。これにより、多結晶焼結体の物性(粒径や焼結程度など)をより詳細に評価することができます。さらには、高温高圧下における鉱物の変形や、相転移などに伴われるミクロな結晶構造変化などを探る研究への応用も期待されます(大藤弘明)。





 
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