高圧下での水素化鉄生成の中性子その場観察に成功
GRCの飯塚理子博士(日本学術振興会特別研究員:現東大特任助教)及び岡山大学・東京大学・日本原子力研究開発機構らの研究グループが、J-PARCの超高圧中性子回折ビームライン(PLANET)において、含水鉱物が脱水してできた水と固体の鉄とが反応して、鉄水素化物が生成する様子をリアルタイムで観察することに成功しました。本研究成果はイギリスのネイチャー出版のオンラインジャーナル「Nature Communications」誌1月13日号に発表されました。
地球の中心核(コア)は主成分である鉄に軽元素が溶け込んだものと考えられおり、どんな軽元素がどの程度存在するのかという疑問に対して、これまで数多くの実験的研究がなされてきました。有力候補の1つである水素は、高圧下でしか有意に鉄に溶け込まないこと、X線など従来の実験法では直接観察できないことなどから、その振る舞いはまだよく分かっていませんでした。
飯塚理子氏、八木健彦氏(GRC客員教授、東京大学特任研究員・名誉教授)、後藤弘匡氏(東大物性研技術専門職員)らは、岡山大学と日本原子力研究開発機構との共同研究で、水素の振る舞いを直接観察できるPLANETに設置された超高圧中性子回折装置(「圧姫」)を用いて、地球生成初期に集積した物質をモデル化した試料で高温高圧実験を行いました。この結果、高圧下で温度が上昇し含水鉱物の脱水が起きると、固体のままの鉄に水素が溶け込むことを明らかにしました。
本研究により、水素が最初に固体の鉄に溶け込み、その後に核−マントル分離や他の軽元素の溶融鉄への溶解が起き、水素が中心核中の重要な軽元素の1つである可能性が高いことが示唆されました。筆頭著者である飯塚氏は、研究当時日本学術振興会特別研究員としてGRCに在籍し(受け入れ教員:入舩徹男センター長)、平成28年12月1日より東大理学系研究科地殻化学研究施設で特任助教として着任しています。
【発表論文】
Riko Iizuka-Oku, Takehiko Yagi, Hirotada Gotou, Takuo Okuchi, Takanori Hattori, Asami Sano-Furukawa, Hydrogenation of iron in the early stage of Earth’s evolution, Nature Communications, doi: 10.1038/ncomms14096, 2017.
【参考HP】
論文HP http://www.nature.com/articles/ncomms14096
Nature Communications http://www.nature.com/ncomms/