大内智博助教らが新しいマントル流動モデルを発表(10/3)
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)大内智博助教,入舩徹男教授(東工大地球生命研究所兼任),高輝度光科学研究センターの肥後祐司研究員らの研究グループが,地球マントル上部のダイナミクスをコントロールしている新しいモデルを提唱しました。
地球のマントル上部(深さ60-410キロメートル)は1400℃に達する高温の世界で,岩石はゆっくりと流動しています。そのマントルに浮いている私達が住む地表のプレートは,マントルの流れと共に動いたりマントル深く沈んだりします。
1970年以降45年間,マントル上部の流れはカンラン石結晶内部の欠陥構造(転位)が原因となって起きるとする,転位クリープというモデルであらわされるとする説が支持されてきました。この説では,マントルを構成している主要鉱物の個々のカンラン石粒子が変形することによってマントルが流動すると考えています。しかしこの説には,マントル上部の粘性は深さによらずほぼ一定であるといった観測結果を説明できない問題点がありました。
大内助教らの研究グループは,地球マントルの流動モデルを再検討するために,大型放射光施設SPring-8の強いX線と,ここにGRCグループが設置した超高圧下での変形実験を可能にする装置を用いて,高温高圧下でのカンラン石の変形実験を行いました。この結果,マントル上部の流動は転位クリープではなく,カンラン石の粒子間のすべり(粒界すべり)によって起きる可能性が強いことが明らかになりました。この粒界すべりモデルでは,マントル上部の粘性がほぼ一定であるとする観測結果もうまく説明することができ,長年信じられてきた転位クリープ説を根本的に見直す必要があることを示しています。
マントルの流動によるプレートの移動や沈み込みに伴って,地震や火山活動などの自然現象がもたらされます。本研究で得られた粒界すべりによるカンラン石の流動に関する理論式は,このような地球内部のダイナミックな挙動と進化を理解する上で非常に重要になると考えられます。
本研究は,アメリカ科学振興協会(AAAS)が発行する総合科学誌Science Advances誌の10月2日版にてオンライン発表されています。
【掲載論文】
Ohuchi, T., Kawazoe, T., Higo, Y., Funakoshi, K., Suzuki, A., Kikegawa, T. and Irifune, T., Dislocation-accommodated grain boundary sliding as the major deformation mechanism of olivine in the Earth’s upper mantle, Science Advances, 1, e1500360, doi:10.1126/sciadv.1500360, 2015.
【参考HP】
発表論文 http://dx.doi.org/10.1126/sciadv.1500360
Science Advances http://advances.sciencemag.org/