お知らせ

市民講演会「超高圧でつくる未来の材料」を開催します

2025年9月29日から5日間に渡って愛媛県民文化会館で行われるAIRAPT-29(第29回国際高圧科学技術会議)に先駆けて、AIRAPT-29愛媛実行委員会が主催、日本高圧力学会とGRCが共催となり、市民講演会「超高圧でつくる未来の材料」を以下のとおり開催いたします。

日時

2025年9月28日(日)14:00~

場所

愛媛県民文化会館 真珠の間B
愛媛県松山市道後町2-5-1

入場料

無料。どなたでもご参加いただけます。

ご来場にあたって

当日の飛び入り参加も可能ですが、事前に参加登録いただけると、ご案内がスムーズです。
参加登録フォームはこちら

概要

物質に数万~数百万気圧の超高圧をかけることで、これまでにない新しい物質を作り出すことができます。実は、自然界でも同じことが起きていて、たとえば地下深く、150km以上に対応する圧力環境にある炭素は、ダイヤモンドへと変化します。このように、高圧下で生まれた物質の中には、常圧(地上の気圧)でも安定して存在し、元の物質とは異なる性質や機能を持つものもあります。研究者たちは、様々な元素を組み合わせてこのような新しい物質を合成し、社会に役立つ新たな機能や特性を見つけ出そうと取り組んでいます。未来には、いったいどんな材料ができるのでしょうか?
日本を代表する高圧力の科学と技術の研究者が、楽しい実験を交えながら、最新の研究成果を分かりやすくお話しします。

講師

清水 克哉 大阪大学基礎工学研究科附属極限科学センター教授
愛媛県西予市出身。八幡浜高校卒業後、大阪大学で物性を学び、2003年より現職。

常温の超電導をめざして

超伝導は電気がまったく抵抗なく流れるようになる不思議な現象です。普通は電気を流すと少しずつ熱になってエネルギーが減ってしまいますが、超伝導ではそれがまったくなくなります。病院のMRIという医療機器や未来の電車リニアモーターカーにも使われています。この超伝導という性質は100年くらい前に発見されましたが、とても低い温度でしか起こらないので、研究者たちはなるべく高い温度、できれば常温でも超伝導になる材料をさがし続けています。もし常温の超伝導が見つかれば、冷やすためのエネルギーがいらなくなり、地球にとてもやさしい夢の材料になって、私たちの生活は大きく変わると期待されています。私は、超高圧をつかって超伝導の材料をつくる研究に注目して、常温の超伝導ができるのではないかと考えています。そのためにダイヤモンドをつかった超高圧装置を開発しました。手のひらサイズなのに地球の中心よりも強い圧力を出すことができます。今回は、この装置でアッと驚く楽しい超高圧の実験をお見せしたいと思います。


入舩 徹男 愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター 特別栄誉教授
三重県出身。京都大学、名古屋大学等を経て、1989年より愛媛大学に赴任。

愛媛で生まれたヒメダイヤ

ヒメダイヤ(ナノ多結晶ダイヤモンド)は、普通のダイヤモンド(単結晶ダイヤモンド)と違い、10ナノメートル(1ミリの10万分の1)くらいの細かいダイヤモンドの結晶がぎっしり詰まった多結晶ダイヤモンドです。ヒメダイヤは、大型の超高圧装置を用いてGRCが世界に先駆けて開発しましたが、単結晶ダイヤモンドを凌ぐ硬さをもつ、世界で最も硬い物質といえます。2003年に初めてネイチャー誌に発表して以来、より高品質で大型のヒメダイヤの合成を試み、2012年には製品化されるとともに、超高圧実験を始めとした様々な研究にも活用されています。
今回は、ヒメダイヤを始めとした物質合成の手段としての大型超高圧装置のしくみや、愛媛で生まれたヒメダイヤの開発の経緯、またその特徴や応用についてお話します。更にこのような超高圧(10万気圧以上の圧力)を利用した、新たな材料の開発について紹介するとともに、ヒメダイヤで作った「世界で最も硬い乳鉢」を用いて単結晶ダイヤモンドを粉末にする実験をお見せします。

TOP