研究成果

ZHANG Youyue助教の論文がGRLに掲載

GRCのZHANG Youyue助教は、中国科学技術大学(USTC)のMAO Zhu教授および大学院生のYU Yingxinさんとの共同研究により、地球の中部〜下部マントル(約700〜1,900 kmの深さ)に存在する謎の小規模地震波散乱体の起源に迫る研究を行いました。これらの散乱体は、S波(横波)速度が2%〜12%低下しているという特徴を持っています。

本研究チームは、海洋地殻の沈み込み時に形成される二酸化ケイ素(SiO₂)の高圧相であるスティショバイト(stishovite)に着目しました。スティショバイトは、特定の高圧・高温条件下で、より高密度な構造である「ポスト・スティショバイト(post-stishovite)」に相転移します。この転移は、鉱物の物性に大きな変化をもたらします。

研究では、大型マルチアンビル装置で合成した高品質な単結晶の(Al, H)含有スティショバイト4種を用い、高圧・高温条件下でその場観察が可能なダイヤモンドアンビルセル(DAC)実験を実施しました。その結果、アルミニウムと水素を含むことで、300 K(室温)での相転移圧力が大きく低下することがわかりました。一方で、クラペイロン勾配(相転移境界の圧力−温度関係)には大きな影響は見られませんでした。この相転移に伴って生じる密度や弾性率の大きなコントラストが、地震波を散乱させる要因となりうることが示されました。

この研究は、沈み込んだ(Al, H)含有スティショバイトの相転移が、中部〜下部マントルに存在する地震波散乱体の形成メカニズムとして有力であることを示唆しています。また、マントル鉱物中の微量元素であるアルミニウムや水素が、地球深部の地震構造に大きな影響を及ぼすことを強調しています。

本研究は、地球深部で起こるプロセスの理解を深め、沈み込んだ地殻物質、鉱物の相転移、そしてマントル内の微細な地震波構造との関連を明らかにする重要な知見を示しています。

Unraveling the Complex Features of the Seismic Scatterers in the Mid-Lower Mantle Through Phase Transition of (Al, H)-Bearing Stishovite. Geophysical Research Letters, 52, e2024GL114146, Yingxin Yu, Youyue Zhang, Luo Li, Xinyue Zhang, Denglei Wang, Zhu Mao, Ningyu Sun, Yanyao Zhang, Xinyang Li, doi:10.1029/2024GL114146

 

TOP