GRCのZHANG Youyue助教は、共同利用・共同研究拠点(PRIUS)の共同研究プロジェクトにおいて、中国科学技術大学(USTC)のMAO Zhu教授らと共同研究を行い、地球のマントル遷移層(深さ約520 km)に存在する地震波不連続面が二重に分かれて観測される現象の起源を明らかにしました。
この現象は、沈み込み帯やマントル上昇流の周辺において、深さ約560 km付近に2つ目の反射面として現れることが知られています。しかし、これまで提案されていたデイブマオアイト(図)の離溶モデルでは、地震学的観測から推定される2~4%のインピーダンスコントラストを説明することが困難でした。
本研究では、炭酸塩による変質を受けた海洋地殻を想定した組成を用い、マントル遷移層に相当する高圧・高温条件(約20 GPa、1,200~1,600 ℃)で実験を行いました。その結果、炭酸塩の添加によってケイ酸塩鉱物との間でCa-Mg交換反応が促進され、さらに鉄(Fe)に富む環境ではケイ酸塩鉱物へのCaの取り込みが増加することが明らかになりました。これにより、デイブマオアイトの離溶が大幅に促進されることが分かりました。
その結果、深さ約560 km付近においてデイブマオアイトが12~33 vol.%まで濃集し、地震学的観測で報告されている2~4%のインピーダンスコントラストを説明できる十分な弾性コントラストが生じることが示されました。
本研究により、沈み込んだ海洋プレートに由来する炭酸塩がマントル遷移層における鉱物の相関係に影響を与え、デイブマオアイトの離溶を促進することで、深さ約560 kmに観測される地震波不連続面を形成し得ることが明らかになりました。この成果は、沈み込んだ物質が地球深部でどのような鉱物反応を引き起こし、それが地震学的にどのように捉えられるのかを理解する上で重要な手がかりとなります。

■論文情報
論 文 名:Deep carbon cycling drives the splitting of the 520-km mantle discontinuity
掲 載 誌:Nature Communications
著 者:Xinyue Zhang, Wei Wei, Youyue Zhang, Zhu Mao, Ningyu Sun, Daoyuan Sun, Wei Leng, Takashi Yoshino, Izumi Mashino, Tomoo Katsura, Jiewen Li, Wancai Li, Jung-Fu Lin