地球深部水研究

circulation_water_j1地球は水の惑星であるとよく言われます。水が存在するからこそ地球に生命が誕生し、緑豊かな環境を生み出しています。一方、地球の形成、進化の過程でも水は重要な役割を果たしてきていることが明らかにされてきています。水は地球深部の鉱物の融点を下げ、マグマの発生を促します。水はマグマの性質を大きく変えることも分かってきています。またある条件下では鉱物に水が含まれ(高圧含水鉱物)、その鉱物により地球深部へと水をもたらしていることも分かってきました。地球深部の410~660 kmの部分はマントル遷移層と呼びますが、この部分にはかなり(数重量パーセント程度)の水が存在している可能性も明らかになってきました。さらにそれより深い下部マントルでも高圧含水鉱物が存在している可能性も指摘されてきています。GRCでは上記のような研究を、1)実験室での高圧実験、放射光X線及び中性子を利用した実験、さらに各種分析機器を応用した実験的研究と、2)量子力学理論に基づく第一原理計算法を駆使した数値計算・シミュレーション研究、の2つのアプローチで進めています。

鉱物物性理論

鉱物物性理論グループ(TMPG)では、密度汎関数理論に基づく第一原理量子力学計算法を駆使して、地球惑星物質の超高圧物性について理論的・計算物理学的立場から研究を行っています。またそのために必要となる方法論や手法を開発しています。複雑な数式を計算するため、スーパーコンピューターなどを用いて大規模数値シミュレーションを実行します。これにより現在では、高温高圧相転移と高圧結晶構造、状態方程式を含めた高温高圧熱力学特性、弾性定数テンソル、変形特性、熱輸送特性など、地球惑星物質の重要な物性について、実験と同程度か実験を上回る精度での予測が可能となっています。TMPGでは、ポスト・ペロヴスカイト転移、スピン転移をはじめとして、SiO2最高圧相や最高圧含水ケイ酸塩相(Phase H)の発見、下部マントル鉱物学モデルの構築、核マントル境界の熱特性の推定など、地球惑星深部の構造やなりたちの謎に迫る先駆的な数々の研究成果を発表しており、トムソン=ロイター社のNew Hot Paper、文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞、鉱物科学会賞など多くの賞を受賞しています。

レオロジー(動的物性)

高温高圧実験を軸とした実験岩石学的手法に基づいて、地球深部物質についてのレオロジー、元素拡散、鉱物化学反応カイネティクス、微小地震などの動的物性の解明を進めています。レオロジーの研究では、D-DIA装置を用いた高温高圧変形実験により実際の地球深部条件(最高深さ500km)で岩石・鉱物を変形させ、その粘性率や微細組織の発達を調べ、地球内部での物質の輸送速度、流動パターンなど地球内部進化の理解の鍵となる性質を明らかにしています。また、実験試料の微細組織の多様な手法による分析を通じて、レオロジーや元素拡散を司るミクロなメカニズムを明らかにし、物質の動的物性の総合的な解明を目指しています。最近では (1) マントル鉱物の粘性率測定に基づいたマントル内での物質輸送、 (2) マントル鉱物の変形誘起選択配向から探る地球内部地震波異方性の成因、(3) 差応力下のマントル鉱物の微小破壊音測定から探る深発地震の成因、(4) 反応実験・拡散実験に基づいたマントル物質の化学組成と状態の時間変化、などの研究テーマに取り組んでいます。

対流シミュレーション

「マントル対流」と呼ばれるマントル内部のダイナミックな運動は、地表面で我々が経験するさまざまな地学現象 (地震、火山、地殻変動、大陸移動、プレート運動など) を引き起こす原動力になっているばかりでなく、地球型惑星の内部での熱や物質の移動をも支配する重要な現象です。 我々は数値流体力学を主な手段として、マントルダイナミクスの研究を行っています。 これを通してマントル対流を理解し、さらには地球型惑星の内部の理解をより深めることが究極の目標です。
具体的には、マントル対流を記述する方程式を計算機の中で数値的に解くことにより、マントル内部の流れを調べています。 実際のマントル対流では、マントル物質の性質(流動特性、相状態など) の複雑な変化によって、単純な流体のものとは様相が大きく異なると予想されます。 そこで、シミュレーションに用いるモデルを少しずつ「現実的」にすることで、マントル対流の全体像を明らかにすることを目指しています。 これと同時に、より高度なシミュレーション研究を可能にする手法の開発にも取り組んでいます。

結晶化メカニズムから探る材料科学

高温高圧という極限環境における鉱物の相転移や結晶化,組織化のメカニズムを高圧実験(その場観察と回収試料の分析)および,天然試料の観察を通して調べています.鉱物は,結晶構造や周囲の化学的条件,温度圧力条件などに応じて固有の形態,産状を示しますが,そのような環境下で鉱物がどのように結晶化したかという痕跡は,しばしば微細組織の中に記録されています.電子顕微鏡を用いると,そのような試料の表面・内部組織,化学組成,結晶構造,結晶方位などの様々な情報をミクロ~ナノ領域から引き出すことができます.最近,この研究手法を地球科学だけでなく材料科学の研究へも積極的に活用しています.例えば,高温高圧下におけるグラファイト-ダイヤモンドの相転移および組織化プロセスは,出発物質に用いるグラファイトの結晶性に強く依存することが分かってきました.その仕組みを鉱物学・結晶学的見地よりきちんと理解すれば,新しいアイデアを次の実験に反映させることも可能です.様々な出発物質,合成条件で試行錯誤を繰り返し,現在ではナノ多結晶ダイヤモンドの微細組織制御もできるようになっています(図参照)


様々なグラファイトソースより合成したナノ多結晶ダイヤモンド.(左:アモルファス様ダイヤ,中央:NPD,右:層状NPD)

実験鉱物物性・岩石化学

sp8.fig1地震波の伝播速度などの地球物理学的情報は、地球内部の層構造や密度・弾性的性質に関する情報を与えてくれますが、地球内部に存在する物質やその化学組成については教えてくれません。本グループでは、マルチアンビル装置やダイヤモンドアンビル装置を用いた超高圧高温実験技術の開発を進めるとともに、このような最新の超高圧実験技術と放射光X線その場観察を組み合わせ、地球のマントルや核物質の結晶構造変化(相転移)や融解関係、また密度や弾性などの物性の精密測定を行っています。特に下部マントルや沈み込むプレート(スラブ)、また地球の中心核に焦点を合わせ、これらの物質中の相関係の解明と物性測定結果を、地球物理学的情報と対比させることにより、その化学組成やダイナミクス及び進化過程の解明を目指しています。

超高圧物質合成

himeGRCで開発された超高圧実験技術や独自の大型超高圧装置を活用し、超硬材料など新物質の合成と特性評価を行っています。とりわけ独自に開発したナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)の高品質化・大型化を行い、超高圧発生、高圧下X線吸収、高圧下単結晶構造解析、高圧中性子回折など、新しい高圧実験技術への応用を試みています。また、ヒメダイヤ合成技術を応用することにより、様々な高圧相ナノ多結晶体の合成を行っています。この結果、例えば硬くて割れにくいナノ多結晶スティショバイトや、高い透光性を有するナノ多結晶ガーネットなど、次々と新たな物質を生み出しています。このグループでは、理学部・工学部の他分野の研究者との超高圧合成を利用した学際的共同研究や、海外のグループと連携した国際的共同研究を多数行うとともに、企業との共同研究にも積極的に取り組んでいます。

地球深部ダイナミクス研究センター

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