ヒメダイヤを用いた研究成果がSci. Rep.誌に発表(7/27)
H2Oが結晶化した固体である氷は、圧力が加わると様々な高圧相へと変化します。最近氷の高圧下での中性子線回折測定結果が報告され、高圧氷(VII相)では圧力約26万気圧以上で水分子の半数が水酸化物イオンと水素イオンに解離し、解離した水素イオンが格子間位置に局在しているという「格子間位置モデル」が提案され注目されています(Guthrie et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 110, 10552-10556, 2013)。
本研究では、第一原理計算による高圧氷のX線ラマン散乱(XRS)スペクトルの予測と、SPring-8のBL12XUにおける高圧下のXRS測定実験が行われました。この結果、格子間位置モデルを仮定した場合に予想された低エネルギー側のピークがXRS測定では認められず、このモデルに再検討が必要なことが明らかになりました。本研究における高圧下でのXRS測定には、比較的大容量の試料容積に対する高圧下での測定が可能な、ナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)製アンビルが用いられています。
本研究成果は、理化学研究所、兵庫県立大学、合肥工业大学(中国)、國家同步輻射研究中心(台湾)、愛媛大学・東京工業大学の研究者の共著としてNature出版のオープンアクセスジャーナルScientific Reports7月27日号に掲載されました。
【参考HP】
T. Iitaka, H. Fukui, Z. Li, N. Hiraoka, T. Irifune, Pressure-induced dissociation of water molecules in ice VII, Sci. Rep. 5, 12551, doi: 10.1038/srep12551, 2015
(http://www.nature.com/srep/2015/150727/srep12551/full/srep12551.html